去年はスムシっ子カードを使用してみましたが、底板を掃除する際に気づいた事があります。それは、スムシっ子カードの周りにだけ巣クズが溜まり、発生したスムシが中や下に入り込んでいます。しかし、それが問題でスムシっ子カードの中に潜られるとミツバチたちは対処できない事に気づいたのです。基本的にスムシの親であるハチノスツヅリガなどの蛾はミツバチが入れない小さな隙間や幼虫の餌になる巣クズが溜まった場所の近くに卵を産んでいるはずです。まぁそれがスムシっ子カードになる訳ですが、スムシっ子カードの下で繭になっているものもおり、毎度スムシっ子カードを掃除しないといけません。小さな卵や幼虫は咥えて外に出せるはずなのですが、スムシっ子カードの下で大きく育ってしまったら蜂たちが咥えて出せないサイズにまで成長してしまう危険性を感じました。なので今年はスムシっ子カードを使用せずに日本蜜蜂のスムシ対策に任せ観察する事にしました。

春から観察を続けていますが、蜂数の多い群れは底板もキレイで巣板も蜂で覆われており、いまだに巣クズが溜まらない底板にスムシは発生していない様です。弱った群れでなければ、ハチノスツヅリガ等が入って卵を産みつけてもすぐに排除されるのでスムシまみれになるはずがないのですが、スムシ被害の報告はネット上でも多く予期せぬ場所にスムシが発生していることに気づきました。私は先日まで簡単に中の様子を見ることができるように、トタンの下に合板と厚板を重ねた簡単な天井板を置いてあるだけにしていました。反りにくい合板を一枚置いた上に1枚板を置き、隙間が生まれないようにしていますが、梅雨や流蜜期になると天井板も湿気で膨れてしまい僅かにできたその隙間に卵を産まれてしまったようです。

天井を開け覗いてみると、スムシが僅かにいる気配がありました。去年の越冬群れの天井には、蜜蜂達が上がってこないように綿生地を入れていたのを忘れており、その綿生地の隙間にスムシの屑が見受けられました。慌てて綿生地を取り外しましたが、蜜蜂がスムシ対策であちこちを蝋で固め侵入経路を塞いでガードしていたようです。せっかく蜜蜂達が作った防壁を壊してしまった恐れがあったのですが、スムシ掃除をしないとこれはまずいと。

蜜蜂達が作った擁壁の中に1mmにも満たない干からびたスムシの赤ちゃんも多数おり、あちこちを蝋で封鎖し完全ガードで押さえ込んでいたようです。繭に入った8mm程度の幼虫が1匹、3mm程度のスムシが2匹確認できたのでそれを除去しました。あとは棒で少しずつ削ったりしながら掃除をしましたがスムシの屑は完全には取り除くことができず、急遽作った新しい蓋に取り替えてその日は蓋を閉じました。次の日、スムシの卵が残っていて発生していないか気になったので蓋を開けてみました。そこで驚いたのが天井裏に残っていたスムシの屑が全く無くなっていたのです。スムシの糞や死骸など手で掃除することができないような小さな屑が結構残っていたのですが、塵一つ残っておらず全くスムシの気配がない天井裏になっていました。蜜蜂達がせっせと運び出し後片付けをしてくれた様で安心しました。自然の群れは自分達でスムシ対策ができるのです。本来の自然巣であれば継手もなければ蓋もないわけで、入り口の巣門を固めれば問題ないはずですが、人間が用意した巣箱には欠点があり、その欠点は人間に都合が良いように改良されたものが多いのかなと痛感しました。

スムシの侵入経路は巣門、継箱の隙間、蓋の隙間の3ヶ所です。継箱の隙間はできるだけなくし、気密テープを貼っているので問題ありません。蜂数が多ければどこに卵を産みつけられても蜂達が対処できると思いますが、天井と継箱の隙間は巣門に比べ特に厄介です。蜜蜂達が入れない小さな隙間から中に潜られると巣板も近く見張りも少ないため対処が難しくなるのではないでしょうか。今回、天井板と取り替えた材料は、反りが少ない35mm厚の柾目パネルに枠を取り付け蓋にしました。そして、巣枠と重なる部分に隙間テープを貼り蓋と巣枠に隙間ができないように工夫しました。木材は濡れたり乾いたりすることで動きが生じます。それが原因で生まれた隙間から侵入を許してしまったので、隙間テープを利用し完全に外部と遮断することにしました。冬は乾燥しているので隙間は生まれませんが、梅雨となると蓋にしている合板や一枚板が室内側の湿気で反りが生まれ1mm~2mm程度の隙間が生じます。密閉することで新たな問題が発生する可能性も考えましたが、天井裏にいる若い蜜蜂達の行動で問題ないと判断しました。新しい蓋に変えてから覗いてみるとスノコのスリットに隙間なく整列し、扇風行動を行なっていたのです。箱の下に風を送り巣門から湿気と熱気を放出するというシステムが生まれた様です。一列に整列しており、見張りも多く隙間から侵入してくるスムシの幼虫もすぐに捕えることができるでしょう。

早速、今年入居した群れの巣箱にも新型の蓋に付け替えを行いました。蓋を開けて確認しましたが、新しい巣箱にはスムシは発生していませんでした。発生する前に気づいて対策ができホッとしました。今年入居群れは天井を開けられて覗かれたのは初めての経験ですが、うちの越冬群からの別れなので驚くこともなく落ち着いていました。毎日の様に底板を外して写真を撮っているのであまり警戒心がない様です。日本蜜蜂も犬や猫と同じく慣れるそうですが、機嫌が悪い時に触ると噛まれたり引っ掻かれたり刺されたりするのは当然の事ですので、防護服はしっかり着て作業はするようにしています。

販売予定の待ち箱セットの蓋も仕様変更となりました。巣箱の精度が高いので隙間テープが必要かどうかはわかりませんが、僅かな隙間に卵を産まれてしまって侵入を許してしまう恐れもあるので当面テープ有りで様子を見ていこうと思います。